夫婦で同じ趣味、なんて言うと見ていてほほえましいものだが、実際にはなかなかうまくいくものではない。
ゴルフ場で、喧嘩をしているのがいたら夫婦で、仲のよいのは愛人関係というが、ほんとにそのとおりなのだ。最近2度ばかりカミさんを連れて友人と一緒にコースに出かけたら、2人の友人が2人とも「ウチのやつにも進めたんだがだめだった。ああしろ、こう打てと教えているうちに喧嘩になって、もう2度とやるもんかって。それっきりだよ」とうらやましそうに言う。コース途中で私がカミさんに「アドレスが右を向いているよ」とか「バンカーショットはクラブを振り抜かないと」とアドバイスすると「やめとけ、やめとけ」と止めに入る。
私とカミさんとは、彼らがうらやましがるような仲むつまじい夫婦ではない。コースでは何度か大喧嘩になった。それでも一時は、本人が夢中になってゴルフスクールに通っていたが、3年ほどしてパタリとやらなくなった。熱しやすく冷めやすいミーハーのケがあり、今は英会話教室にせっせと通っている。
会社のコンペにも連れて行き、女一人では具合悪かろうと取引先の専務の奥さんを誘い出し、その奥さんはいつも来るのにカミさんが出なくなったいきさつがあるので、今度はこっちが具合悪い。あきらめずに誘っていると、近ごろようやく重い腰を上げて少しやる気になったが、プレー予約当日まで行くだの行かないだの、調子が悪いだの雨が降ったらやる気がしないだのと、連れ出すまでが大変だ。
こっちがキレそうになるのを我慢して、コースに出たらなるべく褒める。スコアが悪いのは私のせいではないが、「スクールで基礎ができているから、ちょっと続ければすぐに10や15は上がるよ」と元気付ける。
実際、私よりカミさんの方がスイングはきれいで、私のショットを見ては「笑える、笑える」などとうれしそうに言う。それでもパットが冴えてなんとかしのいでいると「野球の代打でバントする人みたいに、だれかの代わりにパットだけさせてもらえるといいね」と自分の思い付きが気に入ってまたウフフと笑う。遠くから見たらさぞ楽しげな夫婦に見えるだろう。
ことほどさように、夫婦で同じ趣味を続けるには涙ぐましいほどの努力がいる。しかし、ゴルフは知らない人とやるのは気詰まりだし、うまい人と一緒も気を遣う。ひとりでやっても全然面白くない。ならばやめればよさそうなものだが、たまに会心のショットが出ると、眠っていた才能がついに目覚めたかと喜んで、いつも騙される。この先長く同伴してもらうには、カミさんしかいないのが痛しかゆしというところだ。