研磨機・周辺装置

バレル研磨入門 バレル研磨機について

バレル研磨機の選定には、工作物のサイズ、材質(硬さ)、形状、研磨目的を考慮します。この他に生産数量やバレル研磨工程に費やせる時間、バレル研磨前の状態を考慮して最適な機種を選びます。
主なバレル研磨機はつぎの5機種に分けられます。この他に専用機として、ジャイロ研磨機、レシプロ研磨機、ハイスピン研磨機がありますが、ここでは説明を割愛します。

重圧バレル

機能

当社が開発したオリジナル製品。
この研磨機は、遠心バレルと同様にバレル槽が自転と公転を繰り返すが、遠心バレルの2~4倍の遠心力がかかり(遠心バレルの遠心力が7~10Gに対し、重圧バレルは概ね15~40G)、その一方で自転スピードは遠心バレルの1/10~1/2とゆっくり回転する。その結果、流動層は「低速高圧流動」となり、遠心バレルの「高速低圧流動」のようなマスの飛び跳ねがなくなり、穏やかな流動となる。

使い方

回転バレルと同様に研磨石、水、コンパウンドを装入する。

メリット

  • 加工能力がきわめて高く、回転バレルの40~100倍の能力がある
  • 研磨石の摩耗が遠心バレルの20~50%削減できる
  • 工作物の変形や打痕、カケワレが少ない
  • 表面粗さが向上し光沢度がきわめて高い

デメリット

  • バレル槽にふたをして密閉するため自動化しにくい

遠心バレル

機能

回転するターレット盤の円周上に断⾯6⾓形又は8⾓形のバレル槽を自転可能に配置したもので、各バレル槽はターレット盤の公転とともに逆方向に自転する、つまり遊星旋回することでマスの表面に流動層が形成され、工作物が加工される。

使い方

回転バレルと同様に研磨石、水、コンパウンドを装入する。

メリット

  • 加工能力がきわめて高く、回転バレルの30~40倍(条件によっては最大60倍)の能力がある

デメリット

  • 激しい流動のため工作物の変形や打痕が生じやすい
  • バレル槽にふたをして密閉するため自動化しにくい

渦流バレル

機能

筒状固定槽とその下端に配置したお椀型の回転盤とでバレル槽を構成し、回転盤が回転することによりマス全体が流動する中で工作物が加工される。

使い方

マス量
標準的にはバレル容積に対して40~50%装入
水量
静置したマス面上10~20㎜まで装入
コンパウンド量
水量に対して1~2%

※マスの装入量を40~50%とするのは、これよりも多いと巻き込み流動が起こりにくくなるため。反対にこれよりも少ないと生産量の低下と工作物の変形や打痕が増えることがある。

メリット

  • 加工能力が高く、回転バレルの10~15倍の能力がある
  • 上方が開放されているので自動化しやすい

デメリット

  • 工作物の変形や打痕が比較的生じやすい
  • 固定槽と回転盤との隙間(「クリアランス」ともいう)に細かな研磨石や薄板状の工作物が入り込みやすいので、これらのサイズが制限される

振動バレル

機能

環状バレル槽とこの中心に上下方向に配置した振動モーターとがバネ上に支持され、振動モーターの作動によりマスに3次元振動を生じさせる。マス全体が流動する中で工作物が加工される。

使い方

マス量
標準的にはバレル容積に対して100%装入
水量
マス容量に対して3~5%
コンパウンド量
水量に対して1~2%

※振動バレルでは、マス量が容積の90%以上装入されて初めて良好な流動が得られる。90%を下回ると流動が崩れやすく、十分な加工量が得られないことがある。

メリット

  • 工作物の変形や打痕が少ないので大きなものも加工できる
  • 容積効率が高いので量産性が高い
  • 上方が開放されているので自動化しやすい

デメリット

  • 細かな粒状研磨石を使用すると流動が崩れやすい
  • 騒音が大きい

回転バレル

機能

もっとも基本的なバレル研磨機で、断⾯8⾓形のバレル槽を回転すると、その内部では工作物と研磨石のかたまり(「マス」という)の表面に流動層が形成され、ここを滑落する工作物が研磨石と擦れ合って加工される。

使い方

マス量
標準的にはバレル容積に対して50%装入
水量
静置したマス面上10~20㎜まで装入
コンパウンド量
水量に対して1~2%

※マスの装入量を50%とするのは、処理量と研磨量のバランスを取るため。つまり、50%以上では処理量が上がるが研磨量は落ち、50%以下では処理量が下がるが研磨量は上がるという特性を考慮したもの。

メリット

  • ほとんどの工作物が加工できる
  • 装置が安価
  • 長時間の連続運転ができる

デメリット

  • 加工能力が小さい
  • バレル槽にふたをして密閉するため自動化しにくい

機種比較表

上記5機種の特徴を比較して表します。

回転バレル 振動バレル 渦流バレル 遠心バレル 重圧バレル
加工能力比 1 1.5~2 10~15 30~40 40~100
バレル容積に対するマス装入量 40~60% 90~100% 40~50% 40~60% 40~60%
対象工作物サイズ 小~大 中~大 小~中
自動化の難易度
価格 安価 中価 高価 高価 高価

※加工能力比は回転バレルの能力を1とした場合の比率で表す